『侍戦隊シンケンジャー』 の殿×ことはにすっ転んだ早瀬美夜がお送りする、ちょっとじれったい系ほのぼのSSブログです。お気に召しましたら幸いです♪

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差し入れ
今回のSSは、ちょっとシリアスに。
ここんとこギャグテイストが強かったので、たまには真面目に行こうと思います。
でもきっちり赤黄です♪
ではでは、↓へどうぞvv
差し入れ


 丈瑠は1人、木刀を振っていた。
 もう深夜と言っていい時間だ。
 他の侍や彦馬はもう既に休んでいる時間だろう。
 黒子でさえ、数人の夜番の者が起きているくらいだろうこの時間に、丈瑠は1人で一心に木刀で型を辿っていく。
 何度も繰り返した、とうに考えずとも身体が覚えているその型を丈瑠は繰り返す。
 どれくらいの時間をそうして過ごしていたのだろう、腕が振り抜かれるたびに汗が飛ぶ。
 それでも丈瑠の剣は止まらない。
 心の中に生じた迷いを振り切るまで、その剣は止まることはないようだった。


『おまえは歪んでいる。 』
 腑破十臓に言われたことが、頭から離れない。
 気にせずともいい、そう思いながらもどこかでそれを否定できない自分がいる。
 志葉家当主として世を守るため、日々剣の腕を鍛えてきたはず。
 そして、志葉家当主として己の命を護るため、心ならずも4人の家臣を呼び寄せたはず。
 しかしその一方で、心のどこかに己の腕がどこまで通じるのか試してみたいという一介の剣士としての欲求も存在することに気付いてしまった。
 命永らえるべき主君としての立場を自覚しながら、それでも命を懸けた闘いを欲する自分に気付いてしまった。
 決して十臓のようにただヒトを斬りたい、斬り合いをしたいなどとは絶対に思わない。
 だが、彼と剣士として戦ってみたい、そう思う気持ちがないとは言えなかった。
 世の人を守るため、家臣を、仲間を守るため、自分は 『正義』 のために剣の腕を鍛えてきたはず。
 それなのにこの欲求は、決して 『正義』 とは思えない。
 もし、十臓が望んでいるように彼と立ち合いをすることになったら。
 命を懸けた真剣勝負を、本気ですることになったなら。
 それを受けてなお、自分は 『正義』 であれるだろうか。
 ただの命のやり取りをすることに価値を見出すだけの男に、十臓と同じところにまで堕ちることになりはしないだろうか。
 そんな恐れにも似た思いが、頭から離れない。


 正眼に構えた木刀の柄に、汗が伝って地面に落ちた。
 それに気付いて丈瑠はようやく構えを解いた。
 ひとつ気付けば他にも気付く。
 まとった道着が汗でずっしりと重い。
 昼間ならすかさず黒子がタオルの1枚も差し出すところだが、今夜は黒子に下がるように言ったからそれもない。
 戻って、それでも黒子が用意しておいてくれたタオルを取ろうと縁側を向いた。
 そして驚く。
 そこに、ことはがいた。
 姿を見られないようにというつもりか、縁側のすみっこの柱に身体を隠した状態で、カオを少しだけ出しているのに気付いて、丈瑠は思わず目を見開いた。
 一体いつからそこにいたのだろう。
 いくら剣に集中していたとはいえ、この程度の距離で人の視線にここまで気付かなかったのは初めてかもしれない。
「どうした? まだ寝てなかったのか。 」
 声を掛けると、見つかったのに驚いてかびくりと肩を震わせたことはは、そろそろと柱の影から出てきた。
「あ、見つかってしもた。 」
 小さくひとりごちてバツが悪そうに微笑むと、寄ってきた丈瑠にタオルを取って差し出す。
 少し長い前髪からぽたぽたと汗が落ちてくるのをうっとおしそうに掻きあげてから、丈瑠はそのタオルを受け取った。
 重い道着を上だけでも脱いでしまいたかったが、さすがにことはの前ではそれもはばかり、そのままその場に座り込む。
 わさわさとタオルで頭を掻き回して拭いてから、ようやく丈瑠はことはに視線をやった。
「それで、こんな時間にどうしたんだ。 寝付けないのか? 」
「…それはうちが言いたいです。 」
 丈瑠の傍らにちょこんと正座したことはは、その表情を僅かに曇らせた。
「…ことは? 」
 なにかいつもと様子が違うのに、丈瑠は眉根を寄せる。
 だが、しばらく待ってもことはから言葉は出てこず、丈瑠はようやく言った。
「どうかしたのか? 」
 ことはは、その言葉に顔を上げた。
 それから、自分の後ろに置いておいたらしいものを丈瑠と自分の間の床に置いた。
 それを、丈瑠は少し驚いたように見つめる。
 おにぎりが2つ、皿の上に乗っている。
 丈瑠の拳ほどのサイズの見事にまん丸なおにぎりだった。
 黒子が作ってくれるおにぎりは綺麗な三角おにぎりで、志葉家において、かつて丸いおにぎりが出てきた事はない。 …ということは。
「…おまえが作ってくれたのか? 」
 こくんとうなずいたことはは、恥ずかしそうにうつむいた。
「殿様、おなかへってるんやないかって思って。
うち、恥ずかしいけどお料理って家でも全然やってなくって。 その、そんな時間があったら修行せえってお父さんに言われてたよって…。
うちがまともに作れるの、唯一これくらいなんです。 」
 指摘されたのと目の前の食糧に、運動した後の身体は急激に空腹を自覚した…途端に腹が鳴る。
 思わず赤くなった丈瑠だが、ことははむしろ嬉しそうに笑って一緒に用意してきたらしい濡れたおしぼりを差し出し、緑茶のグラスを皿の横に置いた。
「どうぞ、食べてください。
茉子ちゃんみたいに上手に作れてればええんやけど。 」
 茉子のように、と言われて一瞬カオが引きつりそうになった丈瑠だが、とりあえず見る限りでは普通にまともなおにぎりに見える。
 手を拭いてお茶をひと口飲んでから1つを手にとって、それから目が点になる。
 かぶりつこうとしたおにぎりにカオがあった。
 グリンピースの目ににっこりの赤い口は紅生姜だろうか。 海苔の髪の毛と、細切りの海苔でつり眉毛と鼻が付けてあって、気の抜ける可愛らしさに丈瑠は脱力した。
 幼稚園児のお弁当のようなおにぎりだが、丈瑠はその頃にもこんな可愛らしいものを作ってもらったことはない。
 思わず笑みがこぼれる。
「あ、あの、あきまへんでしたか? 可愛いかなーと思ったんやけど。 」
「いや。 」
 笑われたのに焦って言い訳することはに構わず、丈瑠はおにぎりをかじった。
 ちょっと固めだが塩加減は悪くない。 充分上出来と言ってよかった。
「うまい。 」
 素直な感想を口にすると、心配そうに丈瑠を覗き込んでいたことはの表情が、ぱっと明るくなった。
「ほんまですか? 」
「ああ。 」
 微笑む丈瑠にことはは、よかったぁ、と笑った。
「あ、今殿様が食べはったおにぎり、殿様のおカオですー。 」
「俺はこんなカオか? 」
「はい! 結構ええ男に出来てますやろ? 」
 ころころと笑うことはに安堵してから、丈瑠は訊いた。
「おまえの家のおにぎりはまん丸なのか? 」
「いえ、お母さんは三角おにぎりです。 このまん丸おにぎりはお姉ちゃんに教えてもらったんです。 」
 ことはは丈瑠からおにぎりに視線を移した。
「子供の頃、両親が出掛けてていなかった時にお姉ちゃんがこっそり教えてくれたんです。
お椀にご飯入れて、もう1つのお椀で蓋して、こう揺するんです。 そうすると綺麗にまん丸なおにぎりが出来るんですよ。
初めて出来た時は、ものすごぉ嬉しくって、お姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて、もっとももっと嬉しくって元気が出ました。 」
 身振り手振りで嬉しそうに話すことはに丈瑠も目を細めた。
 仲のいい姉妹ぶりが伺えて、1人っ子の丈瑠には少し羨ましいと思う。
 すると、ことははじっと丈瑠を見つめた。
「だから、殿様にも元気出して欲しいって思ったんです。 」
「……俺に…? 」
 意味を図りかねて聞き返すと、ことははうつむいた。
「…うちアホやから、殿様がなに悩んでるのか、聞かな判らへん。
ううん、聞いてもなんの助けになることも言えへんかもしれません。
心配するのもおこがましいって言われるかもしれへんけど、でも、うち、それでも殿様が1人で悩んでるの、ほっとけへん。 」
 ことははきゅっと膝の上で手を握り締めた。
「だから、せめて元気出すお手伝いがしたかったんです。
うちのおにぎりくらいで元気出るくらいなら大した悩みやあらへんかもしれんけど、それでも…。 」
 語尾が弱々しくなっていく。
 大切な人に精一杯自分のできることをしてあげたい。
 それでもそれが本当にその人のためになるのかと、言いながら徐々に自信がなくなってきて、言葉が萎れていく。
 と。
 ことはの頭に、ぽん、と丈瑠の手が乗った。
 それに気付いて上目遣いに丈瑠の様子を伺えば、とても穏やかな瞳の主君が自分を見つめていた。
 柔らかい髪をぎこちなく、だが優しく撫でる丈瑠の視線はとても優しい。
「ありがとうな。 」
 穏やかな落ち着いた声で丈瑠は言った。
 なにかいろいろ言いたかったが、口に出したのはそれだけ。
 それでも、それが丈瑠の今の最大の気持ちだった。
 さっきまで心にわだかまっていた重い迷いが、軽くなったような気がする。
 消えてなくなったわけではないけれど、それでもひとつだけ気付いたことがあったから。

 俺は、十臓のようにはならない。
 あの男にはないものを持っているから。
 こうやって自分を案じ、大切に思ってくれる仲間が、…愛しい者がいるから。
 帰れるところがあるから。
 だから、たとえ斬り合いになろうと、絶対に、俺は堕ちない。

 おとなしく、だがどこか嬉しそうに撫でられていたことはが気遣うように訊いた。
「殿様、少し元気にならはった? 」
 見透かすように訊いてきたことはに、丈瑠も微笑む。
「ああ、すごく元気が出た。 おまえのおにぎりのおかげだ。 」
 丈瑠の笑顔が嬉しくて、ことははふわりと花開くような柔らかい笑顔をみせた。
「よかったぁ……ひゃっ! 」
 …ことはの笑顔に、丈瑠は思わず撫でていたその頭を引き寄せた。
 小さな頭の持ち主はやっぱり身体も小さくて、不意打ちも相まってあっさりと丈瑠の胸に転がり込んでくる。
 抱え込むようにことはを片手で捕まえると鼻先をことはの髪が横切り、シャンプーだろうか、その髪の香りに丈瑠は一瞬我を忘れた。
 どうしたことかと自分を見上げた大きな瞳に吸い込まれるように魅入れば、桜色の唇が半開きになって…まるで触れてくれと誘っているようにみえた。
 今まで聞こえなかった己の鼓動がやたらうるさくなった気がする。
 とうに想いを自覚しているその相手を腕の中に収めているこの状況が、夢か幻のように現実味がない。
 もし夢ならば、抗うことなくそこにいる少女の唇に、このまま触れてしまいたい。
 現実ならばまだ己に許さないだろう行為を、幻ならば許してしまいたい。
 被さるように身を屈め、その顔を近付け……た途端、右手のおにぎりがくしゃりと潰れた。
「あ。 」
 我に返った丈瑠は、作ってくれた人の前で思わず握り潰してしまった気の毒なおにぎりをこぼさないように急いで口の中に放り込んだ。
 途端に、腕の中にいた少女が慌てて丈瑠から身を離す。
「と、殿様っ…! 」
 非難じみたことはの声に、嫌だったかとつい抱き寄せてしまったことを丈瑠は後悔しかけた。 だが。
「なんやの、この道着! 汗びっしょりやん! 」
 そういえばさっきまで自分でも道着が重いと思っていた。
 …汗臭かっただろうか。
「こんなんほっといたら殿様風邪ひいてしまうやないですか! 早うお風呂に行ってください! 」
 ことははずいっと皿を押し付けて丈瑠にもう1つのおにぎりを手に取らせると、
「これ食べたら、すぐお風呂に行ってくださいね? じゃ、うちはお皿かたしてきます。 」
 すくっと立ち上がって空になった皿を手にくるりと背を向けた。
「…ああ。 」
 一気にまくし立てられてぽかんとしていた丈瑠は、ようやくそれだけ言った。
 なにやら抱き寄せたことを華麗にスルーされた気がして、少しフクザツな気分なのは気のせいか。
 ふと手の中の顔付きおにぎりに目を落として、それから行きかけたことはを見上げた。
「おい。 」
 びくん、と肩が震えた。
「さっきのが俺なら、このおにぎりは誰だ? 」
 およそ予想していたことだが、丈瑠は言った。
「…うちです。 」
 少しだけ振り返った。
「喰っちまうぞ? 」
 こくん、とうなずくことはの耳が、真っ赤だった。
「…嫌やないですから…殿様なら…。 」
 …ソレは、どうとったらいいんだ?
 ツッコミを入れようにも、ことははそのまま逃げるようにして行ってしまった。
 さっき衝動に駆られてことはを “喰って” しまいそうになった男に、その言葉はむしろ誘っているのかと良い様に取ってしまいたくなるが、天然で奥手なことはがそんなふうに言うはずはないことは判っている。
 中途半端に出てしまった想いに深い溜息をついた丈瑠は、何度か深い深呼吸をしてなんとかその想いを心の中に収める。
 …自制には自信がある、はずだ。
 ふと、手の中のおにぎりに目を落とす。
 にっこり笑うことはおにぎりをじっと見つめて、丈瑠は思う。

 この笑顔が愛おしい。
 この笑顔が俺を見ていてくれるのなら、俺はきっと、堕ちることはない。

 おにぎりにつけられたピンクの口に、丈瑠はそっと口付けた。
 甘い桜でんぶの味に思わず笑みを漏らして、それから丈瑠は一気にかぶりついた。



                                                  了
                                                  

とある夜中の出来事です。
十臓に 『歪んでいる』 発言をされた後、どのくらい後の話でしょうかね。
悩んでいる丈瑠にこっそり差し入れをすることはちゃんです。
…おかしいな、初めてのお料理的なコトを考えてたはずなのに。 (笑)
嬉しそうにおにぎりにカオを付けてることはちゃんを想像すると、可愛くてたまんないですね。
実は作ってるところも考えてたんですが、長くなりすぎたので割愛。
そっちを前面に出せばもっと可愛いカンジのお話になったんでしょうが、殿が悪い、殿が!(笑)
少しは甘く! と思ったら、ことはちゃんに手を出しかけてました。(^-^)
我慢だ、殿! まだ手ェ出すには早い! (大笑)

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| | 2009/09/24/Thu 22:02[EDIT]
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