『侍戦隊シンケンジャー』 の殿×ことはにすっ転んだ早瀬美夜がお送りする、ちょっとじれったい系ほのぼのSSブログです。お気に召しましたら幸いです♪

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「嘘つき」
今回はちょっとシリアスなお話です。
20幕、ことはちゃんのサプライズバースディパーティの後。
殿の初めてのおつかいとかの楽しいネタは他所様で拝見したので、ちょっと真面目なお話を書いてみようと思いました。
でも、赤黄。(笑)
早瀬が赤黄にすっ転んだ記念すべき(大笑)20話ですが、あえてこんなカンジに。
ではでは、下へどうぞ。

  嘘つき


 玄関の方からとたとたと軽い足音をさせて戻ってきたことはは、縁側に続く廊下に丈瑠が立っていたのに気付いて笑顔を見せた。
「源太は帰ったのか。 」
「はい、たった今帰らはりました。 」
 笑顔で答えたことはは、ほうっと幸せそうな溜息をついた。
「ホントに今日は、嬉しくて楽しかったぁ。 」
「そうか。 」
 柔らかく答えた丈瑠もどこか嬉しそうに見える。
 今日はことはの誕生日だった。
 ついさっき、そのサプライズパーティが終わり、今頃他の侍3人は黒子と一緒に後片付けを終えている頃だろうか。
 片付けくらい手伝うと言ったことはだが全員にお断りされ、ならせめてと源太が帰るのを門まで見送りをしてきたところだ。
 おそらく同じように片付けをお断りされたのだろう丈瑠は、ことはを見下ろした。
「もう本当に身体は大丈夫か? 」
「はい! 源さんの美味しいお寿司と殿様が買って来てくれはったケーキをおなかいっぱい食べたから、もう大丈夫です! 」
 小さくガッツポーズを取ることはに、丈瑠はうなずいた。
「無理するな。 休める時にはちゃんと休め。 無理を強いる時もある。 その時のためにもな。 」
「はい。 」
 素直にうなずいたことはは、それからそれまでの笑顔を収めた。
 それを察して丈瑠が訊く。
「…どうした? 」
「あの、殿様。 どうしてもこれだけ言わせてください。 今日の戦い、うち、戦われへんくて… 」
「詫びなら言うな。 」
 一生懸命言おうとしたことはの言葉を、だが丈瑠は遮った。
 それ以上聞かないというように歩き出した丈瑠の後をことはが追いかける。
「殿様…! 」
 縁側に出た丈瑠は、ことはがついてくるのをどう思ったのか、途中で立ち止まった。
「言わなくていい。 おまえが無事なら、それでいい。 」
「でも、うちだって侍やし!
みんなと一緒に戦うためにここに居るのに、うち、今日戦われへんかった…!
うち、源さんに聞きました。 殿様もみんなも、うちを助ける為に外道に落ちようとしたって…! 」
 きゅっ、と服の裾を握っていた手に力が入る。
 パーティの嬉しさと楽しさに失念していた悔しさが、ことはの胸に蘇った。
 決して油断していたわけではなかったのに、1人だけウタカサネの術中に嵌ってしまった己の未熟さは、死ぬかもしれないという状況から脱しても悔いとなってことはの心を傷付けていた。
 それは、初めから覚悟していた 『戦いの中で死ぬかもしれない』 という覚悟とは少し違っていた。
 精一杯戦い、傷付き、その上でのいわば討ち死にならば、侍として誇りを持って死ねたかもしれない。
 しかしこんな無様な死に方は、本来穏やかな性質を持つことはをしても到底自分を許せる死に方ではなかった。
 そして、そんな自分の為に仲間を外道に落としたかもしれない恐怖は、それ以上だった。
 源太が咄嗟の機転を利かせてくれなければ、今頃はこんなに呑気にパーティなどやっていられなかっただろう。
 ことはを大切に思ってくれるみんなの気持ちはとても嬉しい。
 もし他の誰かと立場が変わっていたとしても、ことはも同じように動くだろう。
 それでも。
 無事に済んだからそれでいい。 …それで済むことと済まないことがある。

「戦ってただろう。 」
 うつむいて唇をかみ締めていたことはの耳に、丈瑠の落ち着いた声が聴こえた。
「おまえだって、伏していながらも生死の狭間で必死に戦っていたんだろう。
戦いには出られなかったが、おまえはおまえの戦いをしていた。 恥じることなどない。 」
 顔を上げると、穏やかながらも真剣な丈瑠の視線が向けられていた。
「じいに聞いた。
文献によれば、ウタカサネの術中に嵌ってしまった人間は命が極端に短くなり、目覚めることなく丸一日経った後、そのまま死んでしまうのだそうだ。
病院に運ばれた他の被害者達が文献通り誰一人として目覚めなかった中、ことは、おまえだけは目を覚ました。 それはおまえの侍としての精神力の為せた業だ。 誇りに思っていい。 」
「…でも、それで殿様を危ない目に… 」
「おまえを助ける為、外道に落ちることを覚悟したもの事実だ。 それでおまえが助かるのなら、と。 」
 思わぬことを言われてことはは必死に言い返した。
「そんなんあかん!
殿様を守るためにうちらがおるん! 殿様がうちらのために命を張ったらあかん!
侍は、殿様を、みんなを守るために戦うもんやってうちはずっと教えられてきたんです! 」
 だが、丈瑠は静かに言い返した。
「俺の 『みんな』 の中には、おまえたちも入っている。
誰一人、俺より先に死なせることなど俺は望まない。
それは、共に戦うことを決め、おまえ達に命を預けた今も変わらない。 」
 丈瑠は言ってしまってから、言い過ぎたことを悔いるようにことはから視線を外した。
 言う気のなかった言葉を引き出されて困惑するのが珍しく見て取れて、ことはは目を見張った。

 大切に思っているから無理をする。
 それは家臣たちだけではない。
 主君だって、いや、主君だからこそ、大切にする想いがある。
 覚悟を決めた以上死すら厭わないはずの家臣を、口ではどう言おうとたぶんこの主君は最後まで切り捨てるようなことはしない。
 厳しいことを言うのも、きつい修行を課すのも、誰より家臣を思い、傷付かせぬために。
 この程度で潰れるようなヤツはいらないと叱咤するのも、すべては死なせないために。
 下命のため捨てさせなければならなかったものまで総て背負う気でいる主君を、心清らかな少女はどこまでも慕わずにはいられない。

「強くなれ。 」
 丈瑠はことはを見据えた。
「俺がおまえのために身体を張るのがいやならば、俺が守らずともいいと思えるほどに。
おまえは出会った頃に比べればずっと強くなった。
だがまだまだだ。 おまえはもっと強くなれる。
精進しろ。 」
 ことはの目に、力強さが戻った、気がした。
 気弱だった表情が、一転して侍のものになる。
「…はいっ! うち、がんばります!
うちが殿様のことを守れるように、殿様がうちのことなんか心配しなくても戦えるように!
絶対、もっと強くなります! 」
「頼もしいな。 期待しているぞ。 」
 丈瑠の声が柔らかくなったのにほっとしてか、ことはは笑顔を見せた。
「今日はもう遅い。 おまえはもう休め。 」
「はい。 おやすみなさい、殿様。 」
 ぴょこんと頭を下げてとたとたと廊下を歩いていったことはは、廊下を曲がる手前でふと足を止めた。
「殿様、うち、今日いっぱい殿様からプレゼントをいただきました。 めっちゃ嬉しかったです。 」
「…? 別になにもやってないだろう。 」
 ケーキはプレゼントという表現も変な気がするし、なにか特別ものを贈ったわけではない。
 疑問を口にした丈瑠に、ことはは笑った。
「枕元でうちのこと、『絶対助ける!』 って言わはったでしょう。
役立たずの家臣やったのに大事に思うてくれはって、申し訳なかったけど、うちめっちゃ嬉しかったです。
それに今、『強くなった』 って。
本当にうちなんかまだまだやけど、そう言ってもらえただけで嬉しい。
今日あった事、言ってもらえた事、全部殿様からのプレゼントや思います。
優しい殿様にお仕えできて、うち、幸せ者やわ。 」
 にっこりと可愛い笑顔を向けることはに、丈瑠は言葉をなくした。
 そしてようやく口にしたのは結局。
「……… 早く寝ろ。 」
「はい、おやすみなさい。 」
 今度こそ部屋へ戻っていったことはを見送った丈瑠は、彼女の姿が見えなくなると、ふうっと息を付いた。

 …嘘をついた。
 たぶん自分は、どこまでことはが強くなったって守らずともいいなんて絶対に思わない。
 たとえまかり間違って自分よりことはの方が強くなったとしても。
 否。 そもそも、戦わせたくなどない。
 自分より遙かに小柄で華奢な、ケーキひとつであんなに嬉しそうな笑顔を見せる、どこにでもいそうな普通の少女に、なぜこんな血みどろの戦いをさせなければならないのか。
 強くなんてならなくていい。
 家の奥に置いて、俺が傷1つ付けぬよう絶対にこの手で護り通してやる。
 おまえは、その可憐な笑顔をいつも見せてくれるだけでいい。
 そんなふうに言えればどれだけ気が楽か。
 だが、言えない。
 戦いに引きこんだ他ならぬ自分がそんなことを言ってはならない。
 そして、ことはもそれを望みはしない。
 言えばむしろ彼女は傷付くだろう。 自分は家臣として不要なのかと。
 だから丈瑠は嘘をつく。
 主君としての自分を常に表に出し、志葉丈瑠としての気持ちには蓋をする。
 『優しい殿様』 などではない自分を隠し通す。

 彦馬の嘆願を聞き入れ、仕方なく召集した家臣たち。
 だが、こんなに大切に思ってしまう存在になってしまうなんて思いもしなかった。

「……いい殿様、か。 」
 丈瑠は溜息混じりにつぶやいた。
 『良い殿様』 とはなんだろう。
 主君として、どうしたら 『良い』 のか。
 仲間を大切に思えば思うほど、『主君』 と 『志葉丈瑠』 の思いは離れていく気がする。
 無傷で終わる戦いなど、そうそうありはしない。
 大切にしたいものを危険にさらし、傷付けたくないものを傷付けて。
 最後には、失くしたくないものを失くすのではないだろうか。

 丈瑠は、ぐっと掌を握った。
 そんなことにはさせない。
 己の心を、言葉を偽ってでも。
 必ず守る。
 ……たとえ己の身を犠牲にしても。





                                                  了
                                                 
第二十幕「海老折神変化」 の後のお話です。
ええ、早瀬が赤×黄に思い切りすっ転んだお話です。
ことはちゃんのサプライズお誕生日パーティの後、こっそりこんなことがあったらいいな、とか。
ずっと寝ててひとりなにも知らなかったことはちゃんですが、みんなが外道に落ちてまで自分を助けようとしてたって知ったら、それを源太がぺろっとなんも考えんとバラしてしまったら。
きっと喜ぶよりも悲しみ、自分の力不足に腹を立てたと思います。
そして丈瑠は、仲間を傷付けたくないのに戦いを強いなければならない自分の心と常に戦っていそうな気がします。
家臣を見捨てるくらいなら自分が身を捨てる。
家臣を捨ててでも生き残らなければいけないのに、家臣を傷付けたくない。
十臓さんに指摘された 『歪み』 がそんな理由ならいい、と思います。

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