『侍戦隊シンケンジャー』 の殿×ことはにすっ転んだ早瀬美夜がお送りする、ちょっとじれったい系ほのぼのSSブログです。お気に召しましたら幸いです♪

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「Happy birthday dear my darling」
お久し振りです。
また間が開いてしまいました。
本サイトの方で主催企画があり、約1ヵ月半で12本もSSを書いておりまして、さすがにこっちまで手が回らなかった。σ(^-^;)

ようやくそっちが落ち着いたので、ちょうどタイミングが良かった丈瑠のお誕生日話を上げたいと思います。
殿のお誕生日は公式に出てないので、桃李くんのお誕生日である今日10月17日ということで。
新婚さんの初イベントです♪
では、下へどうぞv

Happy birthday dear my darling


 今日も朝から良い天気。
 出社のため、志葉家の玄関先に出てきた当主は、共に見送りに出てきた妻に笑顔を向けた。
「じゃ、ことは、行ってくる。 」
「はい、丈瑠さま。 いってらっしゃいませ。 」
 可愛らしい笑顔でお辞儀をしたことはは、門の外に待たせてある車まで歩く道すがら訊いた。
「あの、丈瑠さま。 今日はお帰り、遅くなりそうですか? 」
「そうだな、いつもよりは少し遅いかもしれないが、どうしてだ? 」
 ぽんと花が開いたように、ことはがぱっと明るい笑顔を向けた。
「だって! 忘れてはるんですか? 今日は丈瑠さまのお誕生日ですやん。
帰って来はったらお祝いせえへんと! 」
 一瞬きょとんとした丈瑠だったが、次には苦笑を浮かべた。
「ああ、そういえばそうだったな。 忘れてた。 」
「あー、やっぱり。 うち、今日はがんばってご馳走作りますから! それからケーキも用意して、それからそれから、」
「ことは。 」
 勢い込んでいることはの言葉を、丈瑠が止めた。 頭の上に手を置くと、困ったように微笑む。
「別になにもしなくていいから。 」
「え、だって、せっかくのお誕生日やし…。 」
「早く帰ってこられるかも判らんし、晩飯も一緒に食えるか判らん。 だからケーキもいらない。 ああ、プレゼントなんて用意するなよ。 別になにもいらないからな。
そんな気を遣ってくれなくていいから、おまえはいつも通り元気にしててくれ。
俺にはいつものことはがいてくれればそれでいいから。 」
 微笑む丈瑠だが、ことはは素直にうなずけない。
「で、でも…、うち、なにかしたいです。 」
「気持ちだけもらっとく。 ありがとな。 」
 アタマを撫でると、そのついでのようにひょいと身を屈めてキスを落としてから丈瑠は車に乗り込んだ。
 毎朝のコトだが、背後に黒子が控えているのに平気でする丈瑠の行動に羞恥で頬を染めることはに笑顔を向けると、丈瑠はドアを閉めながら言った。
「じゃ、行ってくる。 」
 走り出した車を見送りながら、ことはは不服そうに唇を尖らせる。
 タイミング良く顔を背けた黒子たちが、顔を見合わせて小首をかしげていた。



「だってせっかくやもん、なんかしたいやん。 そう思いません!? 」
 不満そうにつぶやきながら、ことはは廊下を歩いていた。
 くるりと振り返って背後についてくる黒子に同意を求めるが、黒子は困ったように黙ってついてくるだけだ。
 そこに、文句を聞きつけたわけでもないだろうが彦馬が部屋から出てきた。
「殿は無事、ご出社されましたかな。 」
「あ、彦馬さん。 はい、今さっき。 」
 言いながら、ついしゅんとしてしまう。 その表情を見て、彦馬は訊いた。
「どうされました、御方様。 」
 結婚してからことはを正式に御方様と呼び、敬語を使い出した彦馬は、変わらずことはを優しい瞳で見守ってくれる。 それに甘えてことはは言った。
「…丈瑠さま、今日お誕生日やのに何もせんでええ言わはるんです。
うち、せっかくがんばってお祝いしようって思ってたのに。 」
 彦馬は苦笑した。
「それは仕方ありませんなぁ。 戦いで忙しかったせいもありましょうが、殿は毎年ずっと、御自分の誕生日など気にもされておられませんでしたからな。 」
「でも、うちの誕生日の時にはお祝いしてくれはったのに。 」
 まだ婚約期間中のこと、わざわざ京都まで来て一緒にケーキを食べてくれた。
 滞在1時間という慌しいとんぼ返りのお祝いだったが、つまりただそれだけのために丈瑠が忙しい時間を割いてまで来てくれたということで。
 結婚してまだ半年と経たないこのタイミングで、今度はうちの番とことはが張り切るのも当然だった。
「殿は、御自分が誰かのために動くことはあっても、誰かが御自分のために動くなどとは思っておりませんからな。 御方様のお気持ちも嬉しいとはお思いなれど、それほど張り切っておられるとは思ってもおられんのでしょう。 」
 仕事として家臣や黒子に命令して動かすことはあっても、丈瑠個人に好意でなにかしてもらうことには今だ慣れていないということか。
 ことはには婚約期間中も今も色々と気を遣ってくれた丈瑠だが、ことははそれを返せている自信はない。
 大袈裟でなくとも、ちょっとでもその気持ちを返したくて、ことはは彦馬に訊いた。
「…いらへんって言われたけど、うちがちっちゃいケーキ作るくらいやったら、丈瑠さまも受け取ってくれるでしょうか。 晩御飯の後のデザートで食べられるくらいのやつやったら。 」
 プレゼントもいらないと言われてしまったのだ、これくらい許して欲しい。
 彦馬は好々爺の笑みを浮かべてうなずいた。
「御方様の手作りなら、殿も喜んで召し上がるでしょう。 美味しいケーキができると良いですな。 」
「はいっ! うち、がんばります! 」
 ことはは握り拳で張り切った。



 そして夜。
 予定より随分遅い帰宅となった丈瑠は、疲れたカオで志葉邸へ戻ってきた。
 新規の取引会社との折衝がこじれ、難航したせいだ。
 志葉の名が有れど、まだ若い丈瑠を侮ってか先方はやけに強気で、こちらの思うようにはなかなか話が進まないのにイラついた。
 最終的にはこちらの思惑通りに持っていったが結局古参役員の力を借りることとなり、まだまだ己の未熟さに腹が立つ。
 名ばかり社長と言う者ももういないだけの働きはしているが、それでも年齢と経験の差は如何ともし難くて、自分の力だけで事が運びきれないのは悔しくて。
 いつもはことはが心配するからと胸の内にしまってしまう丈瑠だが、珍しくそれが腹に収めきれず機嫌の悪いカオのまま家の門をくぐった丈瑠は、出迎えたことはに笑顔も見せずに家に入っていった。
「おかえりなさいませ。 」
「…ああ。 」
 機嫌の悪そうなのを察してその後はことはも無言で付き従う。
 無言で普段着に着替えてから、随分遅くなった食事を摂ることにした。
 そして、黒子が持ってきた膳を見下ろして、丈瑠は朝ことはと交わした会話を思い出した。
 今日の主食が赤飯になっていた。
 当主の誕生日だからといって特別なにかすることのない志葉家だが、ただ1つ、毎年夕食に赤飯が出されていた。 これが祝いといえば祝いだが、あまりにささやかな誕生祝いだ。
 だが今年はいつもと違うものが、ことはが持ってきた膳に乗っていた。
 手のひらに乗ってしまうようなサイズの小さなケーキだった。
 生クリームとフルーツでデコレーションされ、チョコプレートが飾られているかわいらしいものだ。
 それを一瞥するも何も言わず、丈瑠は黙々と食事を片付ける。
 膳の食事をすべて平らげ、それでもケーキには手を付けない丈瑠に、ことはは勇気を出して言った。
「あ、あの、丈瑠さま。
よかったら、ケーキ、食べてもらえますか? やっぱりお誕生日やから、せっかくやし。 」
 だが、丈瑠は溜息をついた。
「俺は今朝、いらないと言った。 」
「そ、そやけど…。 」
「いらないと言ったものを用意するな。 」
「…ごめんなさい。 」
 うつむくことはにもう一度溜息をつく。
「俺はいらない。甘いものは好きだろう。 おまえが食べればいい。 」
 さっと顔色が変わって固まったことはの様子を疑問に思いながらも、今のささくれ立った気分ではそれ以上優しくもできず、丈瑠は席を立った。
 なにやら後ろに控えた黒子がわたわた慌てている様子なのも気に触る。
 障子戸を開けて廊下に出ると、動かないことはを置いたまま自室に戻るため歩き出した。
 今日は疲れた。 風呂に入ってとっとと眠ってしまおう。
 そう思いながら歩いていると途中で彦馬に会った。 まだ仕事をしていたのか手に書類を持っている。
「殿、お帰りでしたか。 お出迎えもしませんで申し訳ございません。 」
「…ああ。 」
 仏頂面で歩く丈瑠を意に介さず、彦馬は言った。
「どうされました、お仕事の方が上手くいきませなんだか。 」
「上手くは行った。 」
「それはようございました。 しかし、それにしては随分御機嫌斜めのご様子ですが? 」
 平然と訊く彦馬に苦い顔をした丈瑠は、育ての親への気楽さか、つぶやいた。
「自分の力の無さが不甲斐なくて、悔しい。 」
「左様ですか。 それは良い経験をなされましたな。 」
「……? 」
 笑みさえ浮かべる彦馬の言うことが判らなくてようやく足を止めた丈瑠は、無言で彦馬を見た。
「経験の無いことを知るのは良い勉強になりましょう。
確かに殿はまだお若く経験も浅い。 人付き合いも積極的でなかった殿ですから、相手の気持ちを察することも今だ苦手なところもお有りでしょう。 それを埋めるにはひとつしか方法はありません。
相手を良く知ること、そして相手の気持ちを考えること。
何を望むのか、何を考えているのか、相手を良く見て考えることです。
さすれば自ずと、心は繋がりましょう。 」
 にこりと笑顔を向けられ、丈瑠は考え込む。 そして、少しだけ心のざわつきが収まった。
 それを見取ってうんうんとうなずいた彦馬は、丈瑠の背中を押した。
「さ、本日はもうお休みなさいませ。
ああ、そういえば、御方様の手作りケーキは召し上がられましたかな? 」
 歩き出しかけていた丈瑠が固まった。
「…手作り…? 」
「はい。 殿はいらないなどと申されていたそうですが、せっかくの結婚して初めての殿のお誕生日、早くにご両親が他界されて今まで家族に祝われなかった分も自分がお祝いしたいと申されましてな。
可愛らしくもお優しい、愛情深いお言葉、爺は本当に嬉しゅうございました。 」
 表情が強張る。 息が止まった。
 そこに彦馬が止めを刺す。
「随分張り切って何度も失敗しながら作っておりましたから、さぞ愛情の籠もった甘いケーキになっておりましたでしょうが、新婚のお2人にはそれくらいが…殿? 」
 不思議そうにカオを覗き込んだ彦馬は、察した。 厳しいカオで丈瑠に訊く。
「…殿、よもや…。 」
 丈瑠は、返事もせず身を翻した。



 台所のテーブルにちょこんと置いたケーキを、ことはは決壊寸前の涙を湛えた瞳で見つめていた。
 少し前まで黒子たちが傍で心配げにしていたが、いつこぼれても不思議じゃない涙を見られるのが嫌で1人にしてもらった。
 判っている。
 自分がやりたくて勝手にやったことだ。
 丈瑠はいらないといったのに自分が作りたくて作ったのだから、受け取ってもらえなくても丈瑠に文句を付ける筋合いはないし、強制できるはずもない。
 それでも悲しかった。
 ずっと溢れんばかりに与え続けられてきた丈瑠の愛情を少しでも返したくて。
 大切な大好きな最愛の旦那様に自分の心を少しでも判って欲しくて。
 少しでも丈瑠に喜んでもらいたくて作ったはずなのに。
「…うち、やっぱりあほやなぁ…。 反対に怒らせてしまうなんて、ダメダメやん…。 」
 昼間ここでこのケーキを作っていた幸せな気分とは正反対の沈んだ気分で、深い溜息をつく。
 黒子がついていてくれたのに何度も失敗してちょっと泣きそうだったけど、それでも手伝ってもらいはしなかった。 全部自分で作りたかった。
 ようやく満足できる仕上がりになった時は黒子たちが拍手してくれて、丈瑠の喜ぶ笑顔を思い出してドキドキわくわくだったのに。
 何があったのか知る由もないが、機嫌が悪そうだったからタイミングも悪かったかもしれない。 それでもあんなふうに素気無く拒否されて、ショックだったのは確かだ。
 ぽろり、と涙がこぼれてケーキの上に落ちた。
「…あ…。 」
 甘い生クリームの上に塩味の涙が加わった。
 …味が変わってしまった。 …だから、もうこのケーキ、食べられへん。
 そっとケーキの皿を取り上げて、行き着く場所はゴミ箱の前。
 丈瑠はおまえが食べろと言ったけど、これは丈瑠のために作ったケーキだから、彼に食べてもらえないのならもう食べる人はいなかった。 まして自分で食べる気になどなるわけがない。
「…せっかくがんばって作ったけど、…食べてあげられんくって、ごめんなあ…。 」
 なんとなくケーキに詫びて皿を傾けた、その時。
「やめろっ、ことは!! 」
 がたん! と大きな音と共に丈瑠の声がことはの動きを止めた。
 はっとして振り向けば、台所の引き戸に手をかけた必死の形相の丈瑠がそこにいた。
「…なんで… 」
 つぶやくことはの元にすっ飛んで来た丈瑠は、ゴミ箱に傾きかけた皿を取り上げようとする。 それに気付いてことはは反射的に抵抗した。
 悲しかった想いが爆発して、思わず喚き散らす。
「やっ、なにしに来たんですかっ。 触らんといて! コレはもう捨てるんですから! 」
「食い物を粗末にするな! 」
「丈瑠さまがいらん言うたんやないですか! いらんものがどうなったってええでしょう! 気にせんといてください! 」
「捨てるなら俺が食う! 手を離せ! 」
「ヤです! 丈瑠さまになんかあげません! 」
「俺のために作ってくれたんだろう!? 」
「もぉええんです! 余計なコトしたうちが悪いんです!」
「余計じゃない! いいから寄越せ! 」
「イヤや! そんくらいなら捨てます! そんで、うち、もう二度とケーキなんか作りません! 」
「悪かったから! 俺が全部悪かったから捨てるな! おまえの作ったケーキならいくらでも食う!
だからおまえの気持ちまで捨てないでくれ!! 」
「…っ! 」
 ことはの動きが止まった瞬間を逃さず、皿ではなくその上のケーキを手づかみで捕まえた丈瑠は、そのままかぶりついた。
 あ、とその動きを目で追ったことはは、ケーキがすべて丈瑠の口に納まってしまうのを見届けると、力が抜けてすとんとその場に座り込んでしまう。
「美味かった。 」
 指についた生クリームを舐め取りながら、丈瑠はことはに笑顔を向けた。
「……っく…、ふっ…。 」
 ようやく欲しかった丈瑠の笑顔がもらえたからか、ことはの目から涙の雫がぽろぽろと零れ落ちた。
 その辺の布巾で手を拭いていた丈瑠は、ことはの前にしゃがみ込んで膝を着くと、愛妻の身体を抱き寄せた。
「本当にごめん。 悲しい思いをさせた。
おまえの気持ちにも気付かないで泣かせちまった。」
 その腕と言葉が暖かくて優しくて、ことはは知らず、ほっと息をついた。
 そしてアタマを横に振って、丈瑠の胸にすがる。
「違う、うちが悪いんです。 うちが勝手にしたかっただけやもん。 丈瑠さまは悪うない。 」
「そうじゃない。 おまえは俺を想ってくれただけだろう。 おまえは本当になにも悪くないんだ。
俺が全面的に悪い。茉子にバレたら確実に殴られる。 」
 ここにいない家臣を思い出して苦笑する。
 それから、口調に僅かな苦味が入った。
「自分の不甲斐なさに対する苛立ちを押さえ切れなくておまえに当たった。 それでおまえを泣かせた。
これじゃ仕事相手に若いと侮られたって仕方ない。
…俺も、まだまだだ。 今日それを、嫌って程思い知った。 」
 珍しいグチに、ことはが気遣うように視線を上げた。
 その視線を受け止めて、丈瑠はふっと微笑む。
「もう大丈夫だ。 気付いたし、もう開き直った。 心配するな。 」
「…はい。 」
 ことはもようやく微笑んだ。
 その笑顔に露骨にほっとして、丈瑠は唇を寄せる。
「…本当に、ごめんな。 」
 仲直りの甘いキスは生クリームの味がして、ことはは少し可笑しくなる。
 自分が食べてへんのに、甘い。
 離れてからふふっと笑ったことはは、なんだよと丈瑠に訊かれても、なんでもないと幸せそうに笑った。



 寝室に戻った後。
 ことはが、ぽつんとつぶやいた。
「結局、丈瑠さまのお誕生日祝い、ちゃんとでけへんかったなあ。 」
 残念そうなことはの様子に、丈瑠は笑った。
「まだ言ってるのか。 だから、なにもしなくていいと言っただろう。 」
「だって。 」
「おまえがいてくれればそれでいい。 」
「それじゃ、普段と同じでなにもしてへんのと同じやないですか。 」
「それがいいんだ。 判らないか? 」
 申し訳ないことに意味が判らない様子のことはに、丈瑠は向き直った。
「俺は、その普段と同じな今のおまえとの生活が、1番嬉しくて幸せなんだ。
もう戦わなくていい。 おまえに痛い目をさせることもない。
振り向けばいつでもおまえが傍にいてくれて、こうやって一緒に寝起きして、一緒に飯を食って、一緒に笑ったり喧嘩したりできる。
爺がうるさくて、たまに流ノ介や千明が騒ぎに来て、茉子がおまえと遊びに来る。
それだけでいいんだ。
そういう平穏な生活は、俺にとっては望んでも得られないと思って諦めていた子供の頃からの憧れだったから。 」
 はっと、ことはの目が見開かれた。
 丈瑠は、穏やかで優しいまなざしで、ことはを見つめる。
「俺は、ずっと憧れていた幸せで平穏な生活をようやく手に入れた。
これ以上なにを望むことがある? 」

 誕生日だからって、別に特別な日じゃなくていい。
 ただ、いつものように2人で笑いあえる平穏な日でさえあれば。
 ささやかで平穏で平凡な、でもなにより大切な普通の日常。
 世界中の誰もが普通に過ごす、でも丈瑠にとっては得難かったもの。
 丈瑠が望むのは、ともすれば退屈と言われそうな、そんな当たり前の毎日、ただそれだけ。
 たったそれだけが、丈瑠の望みだったから。

 だから、もう、これ以上なにもいらない。

 ことはは、しゅんとした。
「…ごめんなさい。 うち、丈瑠さまのお気持ちにも気付かんと1人ではしゃいでしもぉて。 」
「謝ることなんかない。 おまえのその祝ってくれようという気持ちだって充分嬉しい。 」
 ことはのあたまを撫でて、丈瑠は微笑む。
「でも、おまえにはもう、もらいすぎるくらいいろいろともらってる。 だから、もういいんだ。 」
「え、なんもあげてませんよ? うちばっかりもらいすぎなくらいで。 」
「俺がもらってばかりだと言うんだ、素直に聞いとけ。 」
「そんなことあらしません! 丈瑠さまがうちにくれたものの方がよっぽど多いです! 」
「そんなことはない! 絶対おまえにもらったものの方が多い! 」
「だってあげた覚えありませんもん! 」
「覚えが無くてもいっぱいもらってるんだよ! ああもう、へんなとこばっかり頑固だな、おまえ! 」
「そんなんお互い様です! 」
 言い合ってから、ふと気付く。 …ナニを、なんで言い合っているんだか。
 顔を見合わせて思わず吹き出し、笑い合う。

 …そう、こんな平和な日常が、丈瑠の一番の幸せなんだと、ようやく知る。

 ひとしきり笑ったことはは、ふんわりと柔らかい笑みを浮かべた。
「でもね、丈瑠さま。
やっぱり今日は、うちにとってすごく特別な日です。
だって、丈瑠さまがこの世に生まれてきてくれへんかったら、うち、丈瑠さまとこうやってお逢いできへんかった。
丈瑠さまのことを知らへんまんま、生きてくとこやった。 そんなの、うち、耐えられへん。
やから。 」
 目を丸くしている丈瑠の首に、ふわりと腕を回す。

「お誕生日おめでとうございます、丈瑠さま。
生まれてきてくださって、うちと出会ってくださって、ありがとうございます。 」

 優しく柔らかい笑顔は、丈瑠ただ1人のために開いた優しい花。
 丈瑠は、湧き上がる暖かい心のまま、きゅっとことはを抱き締める。
 …またひとつ、もらった。
「…やっぱりどうでも特別な日にしたいんだな、おまえは。 」
 苦笑まじりに言う丈瑠にだってホントのことやもんと開き直ることはがまた可愛くて、丈瑠は降参することにした。
「…仕方がない、今日だけは祝われてやるか。 」
 言いながら、ことはの唇を塞いで布団の上に押し倒す。
 突然のことにびっくりすることはに、丈瑠はにっこりと笑った。
「じゃあ、もらうプレゼントはおまえのカラダだな。 1番もらって嬉しいモノをもらうべきだろ。 」
 からかう気満載の台詞のはずだったが、真っ赤に染まったことはが恥ずかしげに返す台詞は。
「…そ、そんなんで、ええんですか…? あ、でもそれ、初めから丈瑠さまのもんやし…。 」
 …丈瑠は思わず、くらりと目眩を感じた。
 これが素だから、…これで誘ってるわけじゃないから、健康な成年男子にはたまったもんじゃない。
「…ことは、おまえ、も少し言葉を選べ。 」
「…え? 」
 きょとんとすることはに、噛み付くようにキスをする。
「今夜、寝られると思うなよ。 」
「ええっ!? だって丈瑠さま、明日もお仕事…んんっっ! ( ///// ) 」
 出かけた文句を口封じすると、耳元で熱くささやいた。
「…さあ、これから2人だけのパーティの始まりだ。 」
 目を丸くしたことはは、恥ずかしげに真っ赤にしたカオを、それでもこくんとうなずかせ。
 丈瑠は嬉しそうに目を細めて白い肌に唇を寄せた。


 …俺の誕生日なんて、特別でもなんでもない。
 特別の日というのなら、俺にとっての特別は初めておまえに出逢ったあの日。
 風呂敷包みを背負った小柄な娘が俺をまん丸な瞳でガン見してたあの時から、今までの毎日がすべて俺の特別。
だってそうだろう。
 おまえと共にいたすべてが俺の特別な日だったんだから。

 だから、これからもずっと、おまえと生きていくこの日常が、すべて特別。
 平穏で平凡な、素晴らしき平和な毎日。
 俺はもう、幸せを手に入れているんだ。

 これ以上の幸せがあるとしたら…そうだな。
 …もしかしたら、いつか家族が増えた時、かもしれないな。

 ふと頭をよぎったそんな思いは、しかしことはが与える熱い熱に溶けて、やがて消えていった。




                                         了
                                         


HAPPY BIRTHDAY 桃李くん!
というわけで、日にちの判らない殿のお誕生日を桃李くんと同じ日にしてみました。
結婚して初めての丈瑠の誕生日に張り切る新妻・ことはちゃんてすが。
おいコラ丈瑠、可愛い嫁を泣かすんじゃねえ! とお叱りの声があちこちから聞こえてきそうです。
でもね、たぶん丈瑠には、普通で平和な当たり前の日常、それが1番幸せだと思っているんじゃないかなって思います。
もう再び戦わなくてはいけない日が来ないことを願いながら。

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