『侍戦隊シンケンジャー』 の殿×ことはにすっ転んだ早瀬美夜がお送りする、ちょっとじれったい系ほのぼのSSブログです。お気に召しましたら幸いです♪

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「侍の妻の心得」 ②
と、いうわけで、②です。
②で終わりです。
さて、丈瑠のことはちゃんに対する試験とはなんでしょうか?
では、続きは下へどうぞv

「侍の妻の心得」 ②


「はい。 なんでもお申し付けください。 」
 久々に聞く緊張したことはの声に丈瑠はうなずく。
「これは仮定だ。
俺はたった今、仕事が終わって家に戻ってきた。
昼飯も晩飯も食い損ねて死ぬほど腹が減っていた。
だが、ようやく帰り着いて家に上がろうというくらいのタイミングで、突然はぐれ外道衆が現れたと報告があり、すぐ出て行かなくてはならなくなった。
さて、おまえはどうする? 」
 ことはは、考えるでもなくひとつ頭を下げると、すっとその場を立って部屋を出て行った。
 待つこと、3分もあっただろうか。
 ほどなくことはが帰ってきた。
 笙一の横を抜けて丈瑠の前に膝を着いたことはは、手にしてきたものをその座布団の手前に置いた。
「お待たせしました。 」
 にっこりと笑ってそこに置いたものは、なんの変哲もないおにぎりだった。
 少し大きめのきれいな三角のおにぎりには海苔すら巻かれていない。 ただラップに包まれただけの白飯のおにぎりが2つ、皿にも盆にも載せずに置いてある。
 愛想も素っ気もないその仕様に、丈瑠は口の端を上げた。
「これがおまえの答えか。 」
「はい。 」
 うなずくことは。
 だが、その背後から唸るような怒声がことはを振り向かせた。
「ことは! おまえ、なんやそれは。 」
「…なんやて、おにぎりやけど…。 」
「戦地に赴く殿に、なんちゅう粗末なものをお出ししよるんや!
それも、膳にも乗せず、そのまんま手渡しとは、なんちゅう無礼! ありえへん!
おまえこの半年になに勉強しとったんや! 修行を一からやり直しせぇ! 」
「で、でもな、笙兄さん、こうせんと… 」
「やかまし! 言い訳すんなや! 」
 怒りのあまりにか関西弁になっている笙一に、ことははおろおろと言い訳しようとする。
 だが、それを止めたのは丈瑠だった。
「怒るな、笙一。 ことはが正解だ。 」
「は!? 」
 思わず言い返す笙一と、ぱっと笑顔を見せたことはに等分に目をやって、それから丈瑠はおにぎりを2つとも手に取った。
 片方は上着のポケットに入れて、もう片方をラップを剥いて口にする。
「ん、塩加減もいい。 おにぎり、上手くなったな、ことは。 」
「ありがとうございます。 」
 えへへ、と嬉しそうに微笑むことはの横で、笙一は納得いかない様子だ。
 丈瑠は1つをきれいに食べてしまってから、笙一に視線をやった。
「笙一、判らないか? 」
「…申し訳ございません。 」
 謝りつつも気に入らないのがありありと判る。
「なら、おまえはどうするべきだと思った? 」
「即座に膳を設えます。 黒子たちに簡単でもすぐできるものを作らせ、お持ち致します。
間違っても握り飯など。 」
「握り飯のなにがそんなにいけない? 」
 訊き返されて、笙一は言う。
「志葉の当主の食事が握り飯などありえません。
ましてその仮定なら、殿は食事をきちんとお摂りでない。 それなりに栄養のあるものをお出ししなくては、闘いに支障をきたします。 」
 丈瑠が溜息を落とした。
「だから、根本的にそこから既に間違っているというんだ。 」
 なにが間違っているのか判らない笙一は、困ったカオをしていることはに説明を求めて目を向けた。
 ためらいがちにことはは言う。
「…あのな、兄さん、殿様は外道衆が出た時は、なにをしていようと即座に飛び出して行かはるん。
例えどんだけおなかが減ってようと、そんな時はごはんなんか後回しにしはるから、お膳なんか用意してる暇あらへんよ。
でもおにぎりやったら行き着くまでに走りながらでも食べれらるし、ラップしとけば手も汚れへんでしょ。
それに、兄さん大前提を忘れてはるわ。
うちも侍やもん、一緒に闘いに出るんやで。 ごはん作ってもらうの待ってる場合と違うよ。
ぱぱっとおにぎり作って一緒に持って走るくらいやないと、殿様がごはん食べる暇は作れへん。 」
 はっとする笙一。
 もしかして笙一は、既にことはは侍として戦わないものとして考えていたのかもしれない。
 戸惑う笙一の様子に、丈瑠は言った。
「おまえの意見は、実戦を知らないからこそ出る言葉だな。
笙一、これが1年共に戦った経験値の差だ。 」
 瞠目する笙一。
「志葉家の表の仕事はいつの間にか随分大きくなった。
他者に対する面子とか形式張ったあれこれも必要になるから、習い事が不必要だと言うつもりはない。
だがそれ以前に志葉家は侍の家だ。
それも、形式だけじゃない今も実戦を戦っている侍だ。
その実戦の場に、しゃちほこばった形式なんか気にしている余地はない。
そして志葉家の嫁は、それが判らなくては務まらない。
のんびりお茶だお花だと優雅に奥様をやっていればいいわけじゃない。
それが、ただのでかい家に嫁ぐのと決定的に違うところだ。 」

 志葉の本業はあくまで侍。
 もうほとんど外道衆が出没することもなくなったが、もしまた出陣せねばならない時、とまどうようでは志葉家の奥方は務まらない。
 逆に言えば、普段はどうあれ有事の対応を即座に判断できる者こそ望まれる。
 決して礼儀作法や稽古事を蔑ろにするわけではないが、それよりも侍の妻としての有り様をこそ大切にしなければいけない。
 他の家は知らない。 だが、志葉家ではそれが最優先なのだ。
 笙一は、ようやく自分の思い違いを納得した。

 丈瑠は、笙一を見据えた。
「これでもまだ、ことはが志葉の嫁として不足だと言うか? 」
「…は、いえ…しかし…」
 言いよどむ笙一に、丈瑠は内心で苦笑した。 なかなか頑固なのは家系か。
 だが。
「お言葉、承知致しました。 」
 不意に、女性の声がした。
 はっ、とカオを上げた笙一とことはが背後、丈瑠の正面に当たる襖に目をやった。
 閉じられていた襖がすっと音もなく開かれると、そこには年配の和服の女性が座って頭を下げていた。
「伯母様! 」
「…母さん、いつからそこに…。 」
 思わず声を上げたことはと呻く笙一には目もくれず、顔を上げた女性は丈瑠を正面から見つめた。
 丈瑠は微笑を浮かべる。
「久しぶりだな。 起きていていいのか? 」
「ご無沙汰をしており大変失礼を致しておりました。
殿がおいでと聞きましてはご挨拶しない訳には参りませんわ。
まして、ことはの婚儀のこととなりましては尚更でございます。 」
 言いながらふわりと微笑むその女性は、笙一の母にしてことはの伯母、前シンケンイエローである前花織当主の妻であり現当主である、花織 瑞琶 (みずは) であった。
「息子はまだまだ若輩、融通が利かぬところがございます。
どうかご無礼をお許しくださいませ。 」
 ゆるりと頭を下げる瑞琶に、丈瑠は微笑んだ。
「笙一の言うことが間違っているというつもりはない。 家臣はそれでいいんだ。
…判っているだろう。 」
 にこりと笑うその女性は、全て察しているのだろう。
 主君が言うことと本来あるべき姿は、決してイコールとは言えないということを。
 あるべき姿を主君が承知していてそれでもそれを曲げるというのなら、それがあとで取り返しが付くものならば主君の言葉に従うべきであるということを。
 なぜなら、彼女自身も侍の妻であった女性だったのだから。
 瑞琶は微笑む。
「ことはもまだまだ精進が足りませぬ。
ですが、侍の妻としての心得だけは、しっかり習得している様でございます。
不束者ではございますが、後の奥方教育は彦馬殿にお任せ致します故、どうぞよろしくお願い申し上げます。 」
 頭を下げる瑞琶に、ことはは驚いて思わず訊き返す。
「…伯母様、うち、ええの? 」
「ええもなにも、こんだけ殿に乞われたら仕方ないですやろ。 」
 ころころと笑う瑞琶は、丈瑠の我慢の限界が楽しいらしい。
 言外にからかわれているのが判るのだろう、丈瑠は少し不貞腐れたようなカオで言った。
「吉日を選んですぐに婚礼を執り行う。
詳細や段取りは任せる。 」
「御意。 」
 笑いを収めた瑞琶と笙一が頭を下げ、ことはがぽかんと丈瑠を見た。
 それに気付いて丈瑠がにっと笑う。
「輿入れ、決まったぞ。 」
 徐々に実感が湧いてきたのだろうか、ことはの頬が染まった。
「…えっと…あの… 」
「なんだ、嬉しくないのか? 」
「そんなコトあらしません! 嬉しいです! 」
 慌ててことはが声を上げると、丈瑠は満足げに笑って見せた。
 その笑顔が嬉しくてカオが緩みそうになることはだが、伯母や従兄の手前、恥ずかしくてうつむく。
 すると察したらしい瑞琶がにっこりと笑った。
「では、私どもはこれにて御前を失礼致します。
どうぞごゆるりとおくつろぎくださいまし。 」
「ああ。 」
 丈瑠が鷹揚にうなずくと、笙一がことはに念を押す。
「ことは、ちゃんと殿のお相手をお務めするんだぞ。 」
「は、はい。 」
 うなずくことはを見遣ってから、ようやく笙一は立ち上がった。
 2人が部屋を出て行くと、広い座敷には丈瑠とことはだけが残される。
 どうしようか、とことはが思っていると、ふう、という丈瑠が息をついたのに気付いた。
 ことはの視線に丈瑠はその視線を緩めた。
 すい、と手を伸ばす。
 丈瑠がなにを求めているのかに気付いたことはは、少し恥ずかしそうにしながらもその手を取った。
 途端に力強く引っ張られて、気付けばその身は丈瑠の膝の上。
 思わずカオを上げれば丹精なカオが目の前にあって、ことはは知らず頬を染める。

「…ようやく、俺の元に戻ってくるんだな。 」

 低い囁きは蕩けるような甘さを帯びてことはを包む。
 安堵と歓びの入り混じったその声に、ことはは胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
 …幸せで。

「…やっと、お傍に戻れるの…嬉しいです…。 」
 そっと呟けば応えるようにぎゅっと抱きしめられて。
 気付けば、待ち侘びた唇がことはのそれを塞ぐ。


 華燭の典は、10日後。




                           了
                                                   

『約束AFTER』は、とうとう終盤に入りましたよ。
今回は結婚の前振り。
いつまで経っても花織からの嫁入りOKが出ないのに焦れた丈瑠が、とうとうことはをもぎ取りに行きました! (笑)
やっぱ、我慢も持って半年だったか。
この座敷には当分ダレも近づけないだろうな! (大笑)

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| | 2010/11/20/Sat 05:04[EDIT]
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| | 2010/11/20/Sat 21:08[EDIT]
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| | 2010/11/22/Mon 15:08[EDIT]
Re: 志葉家の謎
>M NOM様v
おおっ、毎度スゴいキャスティングをありがとうございます。
笙一の東さんはまだしも、瑞琶伯母様は野際 陽子さんですか!
豪華! でも、怖っ! (大笑)
もー少し柔らかそうでもいいんではとも思うのですが、でも一家の総領ですからねぇ、あれくらいの迫力があってもいいか。
しかし、そーすっと、前にキャスティングしていただいたのを考えると内藤さんが野際さんの息子…。
うおお、いいのか? (笑)
そして、薫ちゃんの御祖父上は、うおお、更に大御所! 里見さんですか!
ますます豪華や…!
…でも、もう死んじゃってるんですよね。(泣)
だって、ご親戚一同みんな外道衆に殺されちゃってるんだし、まして歴代レッドなんて真っ先に狙われるでしょうし。
あー、でも二刀流ってのはイイな!
里見さんならできるよね、絶対!


>>影武者騒動。
『約束after』は、影武者騒動は無かったものとして書いているのですが、もしアリでやってたとしても、早瀬は、各家の当主ぐらいは知ってるものとして書いていたと思います。
だって当主の子供くらい知っとらんでどうするのと思うのよ。
男の子か女の子かくらい知らんわけないでしょ、いくらなんでも。
ましてや後の自分たちの主君になる人間なのに。
この場合、笙一は知らんのだけど、瑞琶さんは当然知っていて、それでも嫁がせてくれるのだと思います。

「…いいのか? 俺は本当は…。」
「今、志葉の当主を背負ってはるのは丈瑠様、あなたですやろ? でしたら問題あらしまへん。」

そんな会話がこっそりなされていたらいいなぁと思います。
でも、ホントに薙刀振るわれたら無茶苦茶コワいな!(大笑)


>>志葉家の運営手段
ああー、シンケンファン総ての疑問であり、SS書きの総てが公式に明らかにして欲しいと切に願っていたコトですね。
③が大体のサイトさんの支持、というか、普通はコレだろうと思いますが。
個人的には②がヒット! (爆笑)
市のオーナーって、市が個人所有ってスゴい発想だな!
じゃ、侍って、公務員!? 市だから地方公務員か! あ、じゃあ黒子さんもだな!(おおおぅ! 爆笑)
千明、よかったな、この就職氷河期、就職先は志葉市の職員のクチ斡旋してもらえ♪
④も捨てがたい…が、だってもう世の中は天使戦隊なんだもん、そろそろお客さん入ってくんないかも…! (苦笑)

毎度楽しいネタをありがとうございました♪
早瀬美夜 | URL | 2010/11/25/Thu 16:44[EDIT]
Re: 題名!
>teddy様v
あっはっはっは~っっ!! (大笑)
そうですか、「侍」が「俺」に見えましたか。
ソレはきっと、激しくteddyさんのご希望というか願いが視覚に多大な影響を及ぼしたのだろうとお察しします♪
仮祝言、うん、ソレも一応考えたんだけどね。
「仮祝言なんぞしとらんと、さっさと本当の祝言をやらせろ!」 と、殿のお怒りを買ったもので、やむなく中止と相成りました。(笑)
もうちょっとだから!
ホントにもう少しだから、もうちょっとお待ちくださいませ! m(_ _)m
早瀬美夜 | URL | 2010/11/25/Thu 16:50[EDIT]
Re: 『侍の妻の心得 ②』の感想です
>ノリ吉さんv
「殿」の求める志葉の嫁は、やっぱりどこまで行っても「侍の嫁」だと思います。
だって志葉は侍の家であり、花織はその家臣の家、イマドキ当主を殿と仰ぐ家に嫁ぐのだから、やっぱり「侍の嫁」であるべきでしょう。
もちろん侍としての腕をもう振るわなくて済めばそれに越したことはないけれど、それでもやはり精神は侍のままで。
立場は違えどずっとそうあるべきと育てられた2人だからこそ、平和になったから、結婚するのだからと今まで培ってきたものを平然と破棄して宗旨替えができるほど器用ではないと、早瀬は思います。
だからこそ、口にせずともお互いの理想の形が判る。
やっぱりお似合いだと思いますv

そして、ここまで言っといて、でも仰るとおり、「殿」ではなく「丈瑠」個人としては、ただ傍にいて笑っていてくれさえすればいい、それだけが望みですv
うむ、甘い甘いvv

さて、次は華燭の典です。
がんばります。(=∇=)ノ
早瀬美夜 | URL | 2010/11/25/Thu 17:01[EDIT]
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