夏です。
ですから夏祭りのお話でも行ってみたいと思います。
ちょっと閑話休題なのんびりしたお話です。
でもしっかり殿×ことはです♪ (^-^)
では、下へどうぞvv
ですから夏祭りのお話でも行ってみたいと思います。
ちょっと閑話休題なのんびりしたお話です。
でもしっかり殿×ことはです♪ (^-^)
では、下へどうぞvv
夏祭り
今日は、志葉家からそれほど離れていない近所の神社で、毎年恒例の夏祭りだ。
元々賑やかなことが好きな千明がそれを町内の掲示板で見つけてきてみんなで行こうと騒ぎ出し、それにことはが賛成して他の面々を誘い、5人の侍は全員で祭りに繰り出すことになったのだった。
男性陣は平服だが、女の子2人は浴衣だ。
茉子は黒地にピンクの朝顔模様、ことはは白地に金魚と花柄。
それぞれ髪を結って薄く化粧までしている。
「おお、2人ともとても良く似合っているな! 」
「なに、それ自分で選んだの? 」
流ノ介の褒め言葉と千明の質問に、ことはが頬を染めた。
「ありがとう、流さん。 」
「お互いのを選んだのよ。 我ながら可愛いことはにはぴったりな選択だと思うわ。 」
「茉子ちゃんやって、大人っぽくて素敵やわ。 うちもこーいう大人っぽいのが似合うようになりたいなぁ。 」
ことはの少しうらやましそうな視線に、千明が笑う。
「いいんじゃね? 可愛いのが似合ってるうちは、可愛いヤツでさ。 」
「なによ、もうあたしは可愛いのが似合わないってこと? 」
「んなコト言ってねぇだろ! 」
慌てて言い返す千明に、流ノ介がフォローする。
「茉子は可愛いより綺麗の方が似合う。 人それぞれだろう。 」
「褒め言葉と取っとくわ。 」
茉子が笑う。
それからふと気付いて訊く。
「そういう流ノ介は、それこそ浴衣くらい持ってるでしょ。 なんで着ないの? 」
「殿が洋服でお出ましなのだ、私だけ浴衣でどうする。 」
「あ、じゃ、殿様は浴衣着いひんの? 」
隣にいる主君を見上げると、丈瑠は素っ気無く答えた。
「…なにかあった時、洋服の方が楽だ。 」
いつどこで外道衆が現れるか判らないし、それ以外でもどんなトラブルがあるか判らない。 そんな丈瑠の思いを察して茉子とことはは顔を見合わせた。
そしてしゅんとつぶやく。
「…うちもお洋服で来ればよかった…。 」
「おまえはそれでいい。 」
即座に隣から答えが返ってきて、え、と見上げ直す。
「女2人くらい、男が3人いれば守れる。
…せっかくの祭りだ。 たまには着飾るおまえたちを見るのも悪くない。 」
丈瑠の口元に微笑があるのに気付いて、ことはは嬉しくなった。
「はいっ! 」
先に歩き出した丈瑠に、まるで尻尾を振ってついていく子犬のようにことははその背中を追った。
更にその後ろからその光景を見ていた他3人の侍も、顔を見合わせて笑うとゆっくりとその後を歩いていった。
境内はたくさんの屋台と、それを目当てに集まってきた人の群れで既にいっぱいだ。
人いきれでくらくらしそうな人の多さで、田舎育ちのことはは皆についていくのに必死だった。
境内をどんどん進んでいく男性陣と茉子はなんて器用に人ごみを避けていくのだろうか。
「…って、うち、迷子になっちゃう…っ 」
目印にしていた長身の流ノ介が見えなくなって青くなったことはは、どこかに知った姿がないかときょろきょろと周りを見回す。
「…ど、どうしよぉ…っ、茉子ちゃん…、だ、誰か…っ 」
見回した途端にすれ違った男とぶつかってバランスを崩す。
倒れる! と焦った瞬間、横合いから支える腕。 見上げれば丈瑠がいた。
「気をつけろ。 」
「と、殿様~。 よかったぁ。 うち迷子になったかと思ったぁ。 」
ほっとしたことはは、丈瑠を見上げて笑った。
「ちゃんと誰かの傍にいろ。 」
「はい。 ありがとぉ、殿様。 うち、鈍臭いからいつもお祭りとかで迷子になるん。 殿様が一緒やったら、背ぇ高いし、しっかり目印になりますもんね。 」
と、ことはの安堵の笑顔がびっくりしたように手元を見た。
丈瑠の手がことはの手をしっかりと握っている。
思わず丈瑠を見上げたことはに、仏頂面の主君はぶっきらぼうに言った。
「これなら迷子にはならないだろう。 」
「…はい! 大丈夫です! 」
嬉しそうなことはをちらりと見た丈瑠のカオが微かに赤く見えたのは、たぶんことはの気のせいだろう。
手を引いて歩き出そうとした丈瑠がふとことはを振り返った。
「香水でもつけてるのか? 」
化粧品のものとも違う、柑橘系よりもう少し甘い感じの香りをことはから感じたような気がした。
「え? はい、香水とはちょっと違うんですけど。 練り香っていって、京の舞妓さん方が使わらはる柔らかい石鹸みたいなお香で…、あの、ひょっとしてこういうの好かへんかったですか? 」
きょとんとしたことはは、思わず不安になって訊き返した。
本当は化粧にも少々抵抗があったことはだが、和服にノーメイクはむしろ変だから、と茉子に強引に施されたのだ。
京育ちのことはだからお香はそれほど抵抗はなかったのだが、丈瑠には不快なものに感じたのかとびくびくしてしまう。
だが、丈瑠はふいっと正面を向いて再び歩き出した。
「…あの…? 」
「別に、嫌いな香りじゃない。 それに、…おまえに似合ってる。 」
耳が赤くなっているのを見て丈瑠が照れているのに気付くと、ことははなんだか嬉しくなった。
「ありがとぉございます。 うちもこの香り大好きで、特別の時しか使わないんです。 」
つかまれた手をそっと握り返すとぎゅっと力強く握り返されて、ちょっと痛かったけど、ことははますます幸せな気分になった。
たぶん、これからこのお香を使う時には今日のことを思い出すんだろうな。
先を行く丈瑠の後姿を見つめながら、ことははそう思った。
ようやく流ノ介と千明、茉子に追いつくと、なにやら男2人が騒いでいた。
よく判らないが、金魚すくいで勝負だ! となったらしく、2人揃って小銭を屋台のおばさんに差し出しているのを呆れた視線で茉子が見ている。
猛然と金魚を掬っている2人をこちらも呆れたカオで眺めていた丈瑠は、ふと手を繋いだ少女が違う方を見ているのに気付いた。
視線の先を辿れば、ことはの目の先にあるのはダーツの屋台。
その店の奥に並べられているものにまで視線が及んで、ようやく見ているものが判った。
「あのぬいぐるみが欲しいのか。 」
思い切りカオを上げたことはは、なんで判ったのというように驚いている。
ひと抱えもありそうなぬいぐるみがいくつか並んでいて、その中にはことはの折神である可愛いサルのぬいぐるみがあったのだ。
「はい~。 でもうち、こういうの苦手で。 お金の無駄になっちゃうから辞めときます。 」
ちょっと残念そうに笑うことはは、既に諦めていた。
すると、ことはの手を引いた丈瑠が無言で歩き出し、屋台の前で止まる。
「…殿様? 」
ことはの問いには応えず、寄ってきた店のオヤジに小銭を支払うと、やっとことはの手を離してダーツの矢を5本、手に取った。
そしてその手から、矢がまさしく矢継ぎ早に放たれた。
カッ、カッ、カッ!
真ん中の円から1本も出ることなく全てが刺さり、周りがどよめいた。 店のオヤジも目を丸くしている。
「殿様、すごーい! 」
無邪気なことはの喜ぶ声に我に返ったオヤジは、さすがにこれでは文句も言えず、頭をかいた。
「兄さん、どれがいいんだい? 」
「そのサルのぬいぐるみをもらおう。 」
「あ、ちゃいます! その隣の子がいいです! 」
言葉を遮って慌てて言ったことはに、丈瑠は 『その隣の子』 に目をやった。
あいよー、と手渡されたそれは、妙に可愛いライオンのぬいぐるみ。
「お嬢ちゃん、よかったなぁ。 カッコイイ彼氏に欲しいもん取ってもらえて。 」
からかいまじりのオヤジの笑顔に、ことはは真っ赤になる。
「そんなんやあらへん、彼氏なんて恐れ多いです! 」
思い切り否定することはの言葉を少しフクザツに思いながら、丈瑠は訊いた。
「サルじゃなかったのか? 」
「おさるさんは、うち折神があるからええんです。 これは、殿様にとってもろたから。 」
言われて漸く自分の折神が獅子だったのを思い出して、丈瑠はカオが火照りそうになるのを自覚した。
「殿様の獅子折神はもらわれへんけど、このライオンちゃんは代わりにずっとうちの枕元に飾らしてもらいます。 ありがとうございます、殿様。 うち、嬉しい。 」
本当に嬉しそうにライオンのぬいぐるみを抱き締めることはの様子に、丈瑠はこっそりと、子供の頃戯れに短剣の投げ方を習ったことを感謝した。
そしてぬいぐるみを見て、獅子折神の代わりにことはの眠りをちゃんと守れよ、などと思ってから己の思考に気恥ずかしくなって、思わず口元を大きな手で隠した。
「殿! 見てください、この戦果! 」
賑やかな声に振り返れば、随分な数の金魚を袋に入れてもらった流ノ介が誇らしげに寄ってくる。
後ろから来る千明の悔しそうなカオを見れば、勝敗は明らかだった。
金魚如きで意地を張り合う家臣2人を、こいつらもまだまだ未熟だ、と丈瑠はため息をつく。
「面倒は自分で見ろよ。 黒子たちの手を煩わすな。 」
「はい! 」
嬉しそうに応える流ノ介の後ろから茉子がカオを出してことはの抱えているものに気付く。
「あら? ことは、どうしたの、そのぬいぐるみ。 」
「殿様がうちに取ってくれたん! ええでしょお。 」
「あら、よかったわね。 」
「なに!? うらやましいぞ、ことは! 殿! ぜひ私にもなにか! 」
「いやだ。 」
「と、とのぉ~! 」
「ちくしょー! 流ノ介! 今度は輪投げで勝負だ! 次行くぞ、次! 」
どこまでも賑やかな家臣達に軽くため息をつきながら、それでも子供の頃彦馬に連れてきてもらって以来来たことのなかった祭りに、今、家臣たちと訪れていることを決して不快には思っていないことに気付く。
…それもまた、いいか。
今くらい、この浮き立つ気持ちを己に許してもいいだろう。
そう思った時、つんつんと袖を引かれた。
「殿様、彦馬さんにおみやげ、なに買うていきます? 」
ことはに訊かれて、丈瑠は辺りを見回した。
「…そうだな…。 」
楽しい祭りは、まだまだ続いていく。
了
お祭りです。 何気に糖度高し。
短刀を抜き手で投げられる殿様なら、お祭りダーツくらい何の苦もないと思う。
練り香は、実際にあるものです。
早瀬は柚子の香りが好きですが、きっとことはちゃんはもう少し柔らかいお花などの香りが似合うと思います。
さて、彦馬さんへのおみやげはなに?(^-^)
もしかして黒子さんご一同様分もお買い上げ?
うお、店1軒分で足りるかな!? (大笑)
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