『侍戦隊シンケンジャー』 の殿×ことはにすっ転んだ早瀬美夜がお送りする、ちょっとじれったい系ほのぼのSSブログです。お気に召しましたら幸いです♪

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「月光浴」
ようやく、新作です。
しかし、初めに思っていた展開にならず、違う話になってしまいました。(苦笑)
何度か目の最終回を見ながら (笑) 思っていたコトを書いてます。
今回は少しだけシリアスに。

殿→←ことは、という感じでしょうか。
月光浴


 ふと、丈瑠はカオを上げた。
 笛の音がする。
 読んでいた本を閉じて部屋を出た。
 この志葉の家で笛の音の主といえば、たった1人しかいない。
 庭に面した長い廊下の途中に座っている人影を見つけて、丈瑠は足音を立てないよう近寄っていった。
 一心に笛を吹いている少女は、丈瑠に気付いているのかいないのか、その瞳を閉じて最後まで笛を吹ききった。
 そして笛から唇を離したことはは、振り向いて丈瑠がいたのを少し驚いたように見てから微笑んだ。
「殿様。 」
 どうやら人の気配は判っていたが、誰かまでは気にしていなかったらしい。
「満月に笛とは風流だな。 」
 言いながら丈瑠はことはの横まで来て隣に胡坐を掻く。
「はい、うちもそう思って。 」
 笑顔のことはは嬉しそうに微笑んだ。
「お月様の光って、涼しげで綺麗ですよね。
でも、なんや柔らかぁ包まれてるみたいな優しい感じがするのはなんでなんでしょうねぇ。 」
 見上げる丸い月は白々と冴え、静かに2人を見下ろしている。
 その光を浴びながら、丈瑠は静かに言った。
「その割りに、なんだか寂しそうな音だと思ったのは俺の気のせいか? 」
 一瞬ことはの表情が固まった。
 視線を月に向けたままの丈瑠の方を向かず、ことははゆっくり口を開く。
「…殿様には、隠し事でけへんなぁ…。 」
「おまえの笛が正直なだけだろう。 」
「…そぉですね。 お姉ちゃんにもよく言われてました。 うちの笛は、とっても素直やって。 」
 困ったように笑ってから、ことははうつむいた。
「…寂しいなぁ、て、思ってました。
もうすぐ、このお屋敷を、殿様のお傍を離れる日が来るのが。
ドウコクを倒して、外道衆も出てこんようになって、もう平和になったからうちら侍は御役御免、もう帰ってええ。 それを本当は喜ばなあかんのに、なんや、うち、寂しいんです。
あっという間の1年で、お屋敷での生活は、うち、ホントに楽しかったです。
もちろん修行も戦いも大変やったし、死にそうな目にもあったし、楽しいばっかりやなかったけど、それでもやっぱり、うち、みんなと離れるの、寂しいです。
…殿様のお傍を離れるの、寂しいです。 」
 うつむいたままのことはのアタマの上に、大きな手がぽんと乗った。
 さら、とその髪を撫でる丈瑠の手は、ぎこちないが優しい。
「…そうだな。 」
 ようやく返ってきた丈瑠の言葉に、ことははカオを上げた。
「おまえ達と同じ日に、姫…いや、母上も元の家に戻ると聞いている。
おまえ達までいなくなると、この家もさぞ静かになるだろうな。 」
 ふ、と口元が笑む。
「これでまた元の、爺と黒子たちとの静かな生活に戻るんだな。 」
 丈瑠の笑みをどう取ったのか、ことはが再びカオをうつむけた。
 その表情を見て丈瑠が訊く。
「ことは? 」
「…うち、あほやな。 みんな寂しいとは限らへんのに。
殿様は、以前みたいな静かな生活に戻れて喜んではるのに。
ごめんなさい、うちの感傷なんか気にせんといてください。 」
 不意に立とうとしたことはの腕を丈瑠が捕まえる。
「おい、勝手に勘違いして逃げ出そうとするな。 」
「なにがですか。 」
「どうせおまえら、なにかにつけてちょこちょこ来るんだろう。 」
「え? 」
「むしろ寂しがっているヒマがあるかどうかだと思っているんだがな、俺は。 」
 苦笑を浮かべる丈瑠に、ことははぽかんとして、それから恐る恐るというように訊いた。
「…来て、ええんですか? 」
 丈瑠は微笑んだ。
「当たり前だろう。
常時ここにいないってだけで、別に侍まで辞めたわけじゃないんだから。
ハワイの両親の所に行く茉子や、ナニ考えてるんだかパリに行くっていう源太だって、いつまでそっちにいるんだか判ったものじゃない。
流ノ介は歌舞伎の方の都合にもよるだろうが、『私はいつも殿と共にあります!』 とかなんとか言ってただろう。 見るからに来る気マンマンだったし。
千明なんか週イチくらいで勝つまで通うから勝負しろと、もう今から言ってるくらいだぞ。
おまえはさすがにちょっと遠いから、奴らほどしょっちゅうというわけにはいかんだろうが、いつでも、いくらでも来ればいい。 爺や黒子たちも喜ぶ。 」
「…殿様も、喜んでくれはりますか? 」
「ああ。 」
 うなずく丈瑠をじっと見つめて、それからようやくことはは安堵の表情で微笑んだ。
「…よかった…。
…はい、うち、絶対また来ます。 」
「ああ、待ってる。 」
 うなずいた丈瑠は、嬉しそうなことはに言った。
「ことは、もう1曲、笛を吹いてくれないか。 たぶんもうこれで、当分聞き収めになるからな。 」
「はい。 」
 うなずいたことはは、縁側に足を下ろした楽な格好になって、もう1度笛を唇に当てた。
 澄んだ高い音が夜空に響く。
 美しい響きは、曲など知らずとも思わず耳をそばだてて聞き惚れてしまいそうなほどに冴え、それなのにどこか柔らかく聞き手を包む。
 明らかに先程とは雰囲気の違った演奏は、演者の心を映す鏡だった。
 余韻を残して演奏が終わると、目を閉じて一心に吹いていたことはの目が開くのを待っていたかのように静かな感想がつぶやかれた。
「いい音だった。 」
「…ありがとぉございます……っ!? 」
 礼を言ったことはが丈瑠の方を向いた、その時、視界が変わった。
 その小さな頭を抱えるようにして、丈瑠がことはを抱き締めていた。
 驚きのあまり声が出せないことは。
「…ありがとう。 」
 低く、丈瑠がつぶやいた。
「よく、無事に生き永らえてくれた。
先代の侍達のように戦いで命を落とすこともなく、響子…茉子の母親のように身体を損ねることもなく、無事におまえを花織の家に帰してやれることを、俺はなにより嬉しく思う。
…そう思えば、少しくらい寂しいことなど、どれほどでもない。 」
 固まっていたことはが、その言われた内容を理解して目を見開いた。
 なにか言おうと思うのに、声が出ない。
 力強い腕が、決した艶めいた気持ちではないはずなのにどきどきする。
「預けてくれた家臣の命を傷つけることなく返せる幸せを、一体何人の当主が知っていたんだろうな。
まして、俺は影だったっていうのに。
…俺は、幸せだ。 」
 かぁっと頬が染まるのを自覚しながら、それでもことははようやく言った。
「…影でも何でも、うちの殿様は、殿様だけです。
やから、無事にうちの殿様をお護りしきれたことが、ホンマに嬉しくて…ようやく持てた、うちの誇りです。」
 きゅっ、と、抱く力が増した。
 どうしたらいいのかと彷徨っていたことはの手が、申し訳なさそうに丈瑠の服の端をつかまえる。
 そして、消え入るような声で、言った。
「…うちこそ…お傍にいられて幸せでした。
うちの殿様が、殿様でよかった…。 」
 引き寄せる腕が微かに緩んだ。
 それに合わせて、ことはの顔が丈瑠を見上げる。
 僅かに潤む瞳は、それでもこらえ切れない寂しさの表れか、それともなにか違う感情の発露なのか。
 優しく見つめる丈瑠の瞳が不意に真剣みを帯びて、それを悟ったことはの瞳が揺れた。
 ゆっくりと近付いてくる主を受け入れるように、自然にことはの瞳が閉じられる。
 その桜色の唇を塞ぐ…寸前で、丈瑠はなぜか突然止まって、それからことはの額にくちづけた。
 ことはが驚いて目を見開く。
 唇にされると思っていたのだろう、その思い違いに頬が染まる。
 目で問うたことはに、丈瑠は苦笑した。
「…これ以上をしたら、せっかく実家に帰れるおまえを帰せなくなる。 」
 …構わない、と、喉まで出掛かった言葉を、ことはは辛うじて飲み込んだ。
 無事実家に帰せることを喜んでくれた丈瑠に、今、その言葉は言えない。
 そっと優しい拘束を解いた丈瑠は、改めて微笑んだ。
「ことは、胸を張って家へ帰れ。
志葉家18代目と19代目に仕えた侍として、過去のどのイエローよりその役目を立派に果たし、強く成長したその姿を自信を持って両親と姉に見せてやれ。
そして、落ち着いたらまた、俺のところに顔を見せに来い。
俺はいつでもここに、この志葉家にいる。 」
 うる、と視界が揺れたことはは、それでも笑った。
 零れそうな涙を必死にこらえて、精一杯の強がりを、今ここで発揮する。
「…はい。 」
 応えたことはは、その場から立ち上がった。
 おやすみなさい、とつぶやいて頭を下げたことはは、そのまま自室へ戻っていった。



 その後姿を見送ってから、丈瑠はふと視界に入った月を見上げた。
 さっきまで柔らかく温かく感じたその光が、何故だろう、妙によそよそしく肌寒く感じる。
 そう思ってから、丈瑠の口の端に苦笑が刷かれた。
 本当は、何故、なんて思わなくたって判っている。
 1度手に入れた暖かな居場所が、失われようとしているのだから。
 仲間を。
 流ノ介を。 茉子を。 千明を。 源太を。
 …ことはを。
 なくなるわけじゃない、でも、すぐ手の届かないところに行ってしまう。
 それを寂しいと思う自分に苦笑する。

 影だった自分が、本当の当主という居場所を得たのに。
 なにより欲しいと思っていた、『自分がいていい場所』 を手に入れたはずなのに。
 1つ手に入れれば、次のものが欲しくなる。

「…欲なんてないと思ってたのに、な。 」
 ひとりごちる。
 今は、感傷に浸っているだけかもしれない。
 少し経てば、そんな気持ちも薄れるかもしれない。
 離れれば、この気持ちも憧れのようなものだったと、いい思い出だと、落ち着いてしまうかもしれない。
 なら、その方がいいのかもしれない。


「…やっぱり俺は、嘘つきだな。 」
 自分の気持ちに嘘をついて、ことはの気持ちをごまかして。


 でも。
 そうじゃなかったら。
 日が経っても、その想いが募ってしまったら。
 逢いたくて、寂しくて、この腕に留めておきたくなって。
 この気持ちが、本当に愛情なのだと信じることができたなら。

 改めて、迎えに行こう。
 だから、それまでは。

「…もう少し、待っててくれ…。 」

 そんな丈瑠のつぶやきを、丸い月だけが聞いていた。





                                             了
                                                  



最終話より。
最後の日、無言で別れた侍達に、寂しいと思ったのは私だけじゃないはずだ。
言葉などなくとも。 そういう演出だったのは判る!
だが、ことはちゃんに、せめてひとこと! …と、赤黄としては思うわけだよ、うん。
ああ、そうだ、あの場で言ってくれないのは、もう言いたいコトはもう言った後だったんだ、そうに違いない!
そんなワケで、こんな話を書いてみました。
想いを自覚していても口にできない。
『約束』 のシリーズとは少し違う、より本編に近い 『当主』 の丈瑠です。


Comment

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殿が! カッコイイvvv
抱きしめて・・・でも、背を押せる『殿』が素敵♪ きちんと!! その『場』に要る。丈瑠が良いvvv

確かに、千明は入り浸りそう。・・・次は流? 
源は無事に国外に行けるのか!? 
姫sは『折神』に乗ってくるかも??

そんな想像を自分はしています。
teddy | URL | 2010/04/09/Fri 14:43[EDIT]
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| | 2010/04/09/Fri 16:11[EDIT]
Re: 殿が! カッコイイvvv
>teddy様v
自分の想いは行動に出てしまっても、それでも相手、家臣のコトを考えて手を離せる、そんな当主が書けて良かったと思いますv
精神的に、むっちゃ大人な丈瑠さん。
ああ、カッコイイなぁ…vvv

千明は、やっぱ目標なんで、「勝つまで相手しろ!」と言って入り浸り。(笑)
なんつってもヒマな大学生 (浪人?) ですし。
源太…、そもそも日本脱出を心配されるのか。(大笑)
あの屋台、おフランスまで空輸するんでしょうかね?
姫s、あぁ、ナルホド。(^-^)
…て、薫姫って、獅子折神、丈瑠に帰したんじゃ?
早瀬美夜 | URL | 2010/04/12/Mon 21:29[EDIT]
Re: 『月光浴』感想
>ノリ吉様v
ちょっとビターな終わり方でした。
な、泣いちゃダメよ、ノリ吉さんv
少しだけ切ない、でも、もしかしたら…、そんなふうに先に繋がる終わり方。
気に入っていただけて嬉しいですv

唇に触れても良かったのに、額に口付ける丈瑠の心境やいかにv
丈瑠の最後の理性ですねv
我慢の子の丈瑠、男を上げたと思います♪
そして、それでもちょっとだけ本音を漏らした辺りに未練が。(笑)
それもまた良し、と。
さて、丈瑠はことはを迎えに行くのでしょうか。それはまだ、ダレも知らない。(^-^)


こっから、お返事のお返事で。(^-^)

>ドラマで見た金子信雄が演じる平 清盛 があまりにも悪印象だからなんだと

えーと、…大河ドラマ「草燃える」?
すげぇ根性悪い、つか、汚いという印象のとても強い清盛だったと思うのだけど…、ち、違うかな?
さ、さすがにひとケタの年齢だと記憶がおぼろげですが…、アレでしたかね?
たぶん、私の覚えている清盛で1番ヒドイ(笑)清盛はアレだったと思うのだけども。
平家側から見ると、確かに強引だけど頼りになる強い棟梁として、決してヒドイ人物ではないのだけどね。
清盛に限らず、見る側が変わると人物って全然見方や解釈が変わって面白いですよね。
昨年の大河だって、家康の根性の悪いコト! 伊達の性格の悪いコト!(笑)
そして三成のイイ人っぷりったら。


>清明神社

ね!!
やっぱそう思いますよね! 絶対なんか安っぽくなったっつーか、重みがなくなったっつーか。
ナンだ、あの入口んトコのお土産物屋は!?
あ、でも、あそこの宮司さんは変わってませんかね?
すっぱりきっぱりモノを言う宮司さん。(^-^)
子供さんのお名前の説明は…とりあえず漢字字典見て、それらしい意味を考えておくってのはどうでしょうか?(笑)
ちなみに、うちの子供たちの名前の元は「仁義八徳」の中の文字です。
旦那にも1文字入ってるもので。
ちくしょー、どーせおいらにゃ入ってないよーだ! (`m´#)

>石舞台

ぜひ行ってらしてくださいね~!
駐車場は有料ですが。(苦笑)
石舞台の中にも入れますし、のんびりできますよv
拙宅も、G・W辺りにまた、もしかして行くかも♪
…でも、そのタイミングに行くとカキ氷食べられんな。 やっぱ夏休みかな~。(笑)
早瀬美夜 | URL | 2010/04/12/Mon 22:02[EDIT]
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| | 2010/04/12/Mon 22:34[EDIT]
Re: 分からないのは『源』
>teddy様
ああ~、地方ローカルの番組だとTVに出ててもわかんないですよねぇ。
ばっちは劇団員だし、舞台やってるかな~、と思うけどね。
源太as相馬くんは、ブログなんかだと雑誌情報しか出てないしさ~。
みんな業界ではまだまだ新人、それほど売れっ子というわけでもないだろうし、でもやっぱ動向が知りたいですよね~。

源ちゃん、あ、そーいえばパスホートって持ってるのか!?
更に、確かに源ちゃんって結局ドコに住んでたの?
志葉家じゃないもんね、どこかにアパートでも借りてたんやろか。
更に言えば、フランスに渡れるほど貯金があったのか!? そんなに寿司屋で儲かってたとも思えんし。(苦笑)
渡航費、出世払いとか言って丈瑠から借りてたら大笑いですね。(^-^)
早瀬美夜 | URL | 2010/04/14/Wed 20:21[EDIT]
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